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2009年7月31日 (金)

業績悪化を理由に労働条件を見直す時の注意

 急激な業績悪化を理由として、賃金の減額など労働条件を見直さなければならない場合があります。しかし、一定の手順を踏まずに変更してしまうと、後でトラブルになるおそれがありますので注意しましょう。

●一方的な労働条件の変更はトラブルのもと

 賃金の減額をはじめとする、降格・配置転換・懲戒処分等は、社員に不利益に働くため、通常、労働条件の不利益変更と言われます。社員の権利意識も高まっていますので、会社側の一方的な労働条件の変更は、トラブルのもとです。

【危ない「賃金の減額」の一例】

社長:「う~ん。このままだと今月・来月と前年比の半分の売り上げだ…」

部長:「社長、ここは一番経費のかかっている人件費に手をつけるしかありませんよ!人件費をこの人数分、3割程度減らせば、ほら!」

社長:「う~ん。心苦しいが…。なるほど…。当面は乗り切れるな。では、明日さっそく辞令を出してみるか。」

 会社を守るためにも、上記のような「売上が大幅に下がった→社員の賃金に手をつけよう」という直感・感情任せの判断は絶対に避けなければなりません。この場合、社員が被る不利益の度合いと、それを緩和するために、たとえば賃金をカットする代わりにほかの労働条件を有利に変更するなどの代償措置等をとるなど、慎重な対策が求められます。

●就業規則も労働協約もないときはどうすればいい?

 賃金を含むすべての労働条件の変更には、原則として使用者と個別社員の双方の合意が必要です。後日のトラブルを防ぐため変更後の労働条件について確認の文書を残すことも忘れてはいけません。労働条件を引き下げる前に、会社としてできる限りの手をつくしたという前提が必要です。

【不利益変更を行う前に実施・検討すべきポイント】

1.使用者側の諸経費、役員報酬の削減

2.役員数の削減

3.遊休資産等の売却など

4.取引先に協力を依頼し、コスト削減、販管費もカット

5.新卒採用の抑制

6.中小企業緊急雇用安定助成金等の公的助成金の活用

7.労働時間の短縮などの代償措置の検討

8.副業の条件付き認可の検討

上記のポイントを検討し、やむを得ず労働条件の不利益変更を行う必要があるとの結論に達した場合は、

・きちんとした説明のもと

・その妥協点を探り

・合意を得る(社員一人一人から合意書を署名捺印つきでもらう)

ことが最も重要です。

【就業規則の作成・変更による不利益変更の方法】

就業規則の不利益変更には、以下のような点に注意が必要です。

〈就業規則不利益変更の8つのステップ〉

1.現在の労働条件のうち何を変更しようとしているのか、変更によって何が解決されるのかということを明確にする。

2.変更内容について、労基法等の法定要件をクリアしているか確認する。

3.社員全体と特定層(例えば55歳以上の社員等)に及ぼす不利益の程度を比較し、なぜそうなるかの合理的な説明が可能かどうか検討する。

4.不利益変更を補うための労働時間の短縮・その他福利厚生案の代償措置や調整期間を設け、徐々に賃金を引き下げる等の経過措置をとることを検討する。

5.社員過半数代表者等と変更内容についての説明・交渉を十分に行う。

6.不利益を被る社員の意見にも耳を傾け、個別に配慮が可能であれば、調整する。

7.非組合員・管理職のほか、パート、アルバイトといった非正規社員も含め、会社の経営事情・変更される労働条件の説明を決算・経理資料などをもとに行う。

8.1~7を誠実に行ったとしても過半数以上が反対している制度変更の実行はむずかしいということを念頭に置き、制度変更の内容を抜本的に変更し妥協点を探る。

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2009年7月24日 (金)

中小企業の資金繰り支援と税制改正 ~後編~

 前編に引き続き、政府の中小企業への緊急政策のご紹介をいたします。

●中小企業の雇用維持のための助成金

【1】緊急雇用安定助成金の助成率が9割に

 景気変動などによって生産量が減少し、事業活動の縮小がやむを得ないときに、従業員を解雇せずに、休業等により雇用を維持した場合に、休業手当相当額の8割が支給される中小企業緊急雇用安定助成金の助成率が8割から9割に上乗せされます。

*問合せ先 … 都道府県労働局、ハローワーク

【2】派遣労働者一人につき45万円の助成金を支給

 新たに残業削減雇用維持奨励金が創設され、有期契約労働者、派遣労働者の雇用を維持するために、残業の大幅な削減を行っている事業者に助成金が支給されます。

 ・有期契約労働者一人につき30万円 (年間)

 ・受け入れている派遣労働者一人につき45万円 (年間)

*問合せ先 … 都道府県労働局、ハローワーク

●税制による支援

【1】交際費の定額控除限度額を600万円に拡大

 交際費等の損金不算入制度について、資本金1億円以下の法人の定額控除限度額(定額控除限度額に達するまでの交際費の金額の90%を損金算入することができます)が400万円から600万円までに引き上げられ、交際費課税が軽減されます。

【2】贈与税の非課税枠を500万円拡大

 中小企業支援策ではありませんが、需要喚起のために、20歳以上の者が直系にあたる尊属から住宅取得等のための資金の贈与を受けた場合に、500万円までは贈与税が非課税になります。

 ・暦年課税      基礎控除110万円 → 基礎控除110万円 + 非課税枠500万円

 ・相続時精算課税  特別控除3,500万円 → 特別控除3,500万円 + 非課税枠500万円

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2009年7月17日 (金)

中小企業の資金繰り支援と税制改正 ~前編~

 政府の「経済危機対策」(平成21年4月10日)は、中小企業への緊急政策として、融資保証やセーフティネット貸付の拡充、雇用維持のための助成金の拡充などが実施されます。

●中小企業の資金繰り支援策

【1】緊急保証制度(信用保証協会)の拡充

 緊急保証の規模拡大 (20兆円→30兆円)が行われたほか、以下の点が拡充されました。

 1.措置期間の延長 (1年以内→2年以内)

  2.無担保で8,000万円を超える保証の相談にも対応

 *問合せ先 … 金融機関、信用保証協会

 なお、上記 2 については、中小企業庁「『経済危機対策』における中小企業金融対策について」において、次のように対応するとしています。

〈普通保険を活用した無担保保証の弾力的な対応〉

従来、無担保保証は、無担保保険の上限8,000万円までの取扱いとしており、普通保険の2億円に係る保証については、担保による保全を原則としていました。しかしながら、ここの中小企業の特性や実情を踏まえ、信用力が高く、実質的な保全が可能であると各保証協会において判断する場合には、8,000万円を超える無担保保証のニーズに対して、普通保険での無担保保証に柔軟に対応いたします。

【2】セーフティネット貸付の金利引き下げ

 日本政策金融公庫と商工中金のセーフティネット貸付け等規模拡大 (10兆円→17兆円)のほか、元本返済猶予など既往債務の条件変更に積極的に対応するとしています。また、日本政策金融公庫では、次のように金利引き下げなどが行われました。

 1.無担保・無保証人融資の金利引き下げ

 2.関連企業の倒産により経営に困難をきたしている中小企業への金利引き下げ

 *問合せ先 … 日本政策金融公庫、商工中金

【3】雇用促進資金の金利を0.4%引き下げ

 雇用の維持・確保に取り組む中小企業を対象にした「地域活性化・雇用促進資金」融資(日本政策金融公庫)の金利引き下げや対象企業の拡充が行われました。

 1.雇用調整助成金の届け出を行った中小企業も貸付対象となる

 2.運転資金の貸付金利を0.4%引き下げ

 *問合せ先 … 日本政策金融公庫

【4】マル経融資の融資限度額を1,500万円に引き上げ、返済期間も拡充

※マル経融資とは…商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者が、商工会議所の推薦により経営改善に必要な資金を、日本政策金融公庫から、無担保・無保証人で受けられる制度

 小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)が、次のように拡充されました。

 1.貸付限度額 1,000万円 → 1,500万円

 2.貸付期間

  ・運転資金 5年(据置6か月) →  7年(据置1年) 

  ・設備資金 7年(据置6か月) → 10年(据置2年)

 *問合せ先 … 商工会、商工会議所

【5】倒産防止共済の一時貸付金の金利を0.5%に引き下げ

 中小企業倒産防止共済の加入者が掛金納付月数に応じて利用できる「一時貸付金」の金利が次のように引き下げられました。

 1.金利     1.5% → 0.5%

 2.適用期間  平成22年3月31日までに(独)中小企業基盤整備機構が受付けたもの

 *問合せ先 … 独立行政法人中小企業基盤整備機構

後編に続きます。

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2009年7月10日 (金)

得意先の倒産時にやるべきこと ~後編~

今回は、得意先の倒産への対応についてケースごとに見てみましょう。

CASE1【得意先が破産申し立てをした場合】

 このケースでは、もはや破産管財人に処理を任せるしかありません。破産管財人が破産会社の資産を評価処分し支払うべきものを支払い、残った財産から破産管財人の報酬、破産会社の滞納税金を支払って、なお残った財産を債権者同士で按分により配分します。実際は、小規模の破産では配当がない、あっても非常に少額にとどまるケースがほとんどです(売却して換金した財産があっても、税金を多額に滞納しているケースが多いというのが実情)。

*留意点

 破産の場合、税務署は債権回収が不能になったことを認めるので、債権者にはその売掛金等を損金算入できるという税務上の取扱いがあります。ただし、この取扱いを受けるために裁判所もしくは破産管財人から送付される「破産債権届出書」に所定の事項を記載し、必ず破産管財人に提出することを忘れないでください。もし提出期限が過ぎてしまっても、提出を認められることもあるので、破産管財人に電話で事情を説明し提出するようにしましょう。

CASE2【得意先がまだ破産申し立てをしていない場合】

 まず、相手方に対し、支払が遅れていることを伝え、速やかに支払うように請求してください。請求方法は請求書の再発行、面談の上での口頭や電話による請求等どのような形式でもOKです。とにかく速やかに行うことが大事です。なお、こちらが請求書を送付するだけでほかに何もしないでいると、取引相手は運転資金に困っているのが普通ですから、自分から積極的に支払ってくれることはないと思われます。そこで、請求書送付だけで終わるのではなく、積極的に経営者等と面談し、経営状況や支払い計画等についての説明を聞き、自社に対し速やかに支払うように要求することが必要です。というのも、たびたび請求をする債権者は、相手方にとって支払い順序を繰り上げざるを得ない債権者ということになるからです。特に弁護士から内容証明郵便による支払督促をしてもらうことは、順位を繰り上げる要因になります。

*留意点

 請求を繰り返すことが効果的だからといって、常識外の誹謗中傷や嫌がらせ等は絶対にしてはいけません。これらの行為は刑法上の犯罪に該当するおそれがあります。あくまで常識の範囲内での積極的な請求にとどめることが必要です。

CASE3【相手が支払いを約束したが即金支払いではない場合】

 相手が債務弁済契約書等の契約書を締結しても実際に約定通りに支払うとは限りません。そこで、金銭の支払いを目的とする金銭債務の場合には、不履行があった場合に直ちに強制執行をすることができる「強制執行認諾文書付公正証書」(債務不履行の場合には、直ちに強制執行を受けても異議がない旨を記載したもの)を作成しておくべきです。これは手続きが面倒ですが、相手からすれば強制執行をされたくないので、支払いの優先順位を相当に高くするはずです。その意味で効果があります。また、物の引き渡しを内容とするときは即決和解(簡易裁判所を利用する「訴え提起前の和解」のこと)をすることが効果的です。これは弁護士を代理人にしなければなりませんが、不履行がある時は直ちに強制執行の手続きをとることができるので効果的です。

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2009年7月 3日 (金)

得意先の倒産時にやるべきこと ~前編~

 景気が悪い中、取引先が倒産ということも考えられる状況になってきました。もし、取引先が倒産したらどう対応すればいいのでしょうか。今回は、得意先が倒産したという情報が入った場合に、まず取るべき対応を見てみましょう。

【正確な情報を把握する】 

自社が売掛債権等をもっている相手が倒産したという情報(倒産するかもしれない場合も含む)が入った場合、まず得意先の情報をよく確認する必要があります。

●得意先が会社の場合

 相手の商業登記簿謄本を取り寄せ、会社の概要(本店所在地、資本金、代表取締役、その他の取締役 等)を確認し、次に不動産登記簿謄本を取り寄せ、不動産関連情報(不動産の有無、不動産がある場合の担保設定額、担保設定日等の担保設定情報)を確認します。さらに、その会社の代表者もしくは責任ある人と面談し、その人の性格、資質、誠実性等を確認しながら、その会社の経営の現状(単なる債務不履行か、債務整理か、破産申し立て等かの情報を含む)、他の債権者の動向等の債権回収に関する情報を確認します。

*留意点

・支払に支障を来した経営者の中には虚無の説明をして、その場逃れをする人もいるので注意することが大事です。

・できれば倒産に至る前に取引先の概要、不動産等の担保関連情報、経営者の人的情報を十分に調査しておき、信頼できる相手と取引をすることが理想です。取引前に十分な情報を得ることができるとは限らないので、取引後であっても可能な限り情報を入手しておくように努めてください。

●得意先が個人の場合

 運転免許証やパスポートで本人確認し(相手の同意を得てそのコピーを保管しておくことが望ましい)、住民票を取り寄せ、住所を確認します。万一、住民票の記載地と本人が説明する所在地が異なる場合はその理由も確認しておいてください(合理的理由がないのに両者に食い違いがある場合は何か問題がある可能性があるため)。また、個人の場合であっても不動産その他の担保なり得る資産の有無・内容を知っておくことは大事です。

次回は、得意先の倒産への対応についてケースごとに見てみましょう。

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