業績悪化を理由に労働条件を見直す時の注意
急激な業績悪化を理由として、賃金の減額など労働条件を見直さなければならない場合があります。しかし、一定の手順を踏まずに変更してしまうと、後でトラブルになるおそれがありますので注意しましょう。
●一方的な労働条件の変更はトラブルのもと
賃金の減額をはじめとする、降格・配置転換・懲戒処分等は、社員に不利益に働くため、通常、労働条件の不利益変更と言われます。社員の権利意識も高まっていますので、会社側の一方的な労働条件の変更は、トラブルのもとです。
【危ない「賃金の減額」の一例】
社長:「う~ん。このままだと今月・来月と前年比の半分の売り上げだ…」
部長:「社長、ここは一番経費のかかっている人件費に手をつけるしかありませんよ!人件費をこの人数分、3割程度減らせば、ほら!」
社長:「う~ん。心苦しいが…。なるほど…。当面は乗り切れるな。では、明日さっそく辞令を出してみるか。」
会社を守るためにも、上記のような「売上が大幅に下がった→社員の賃金に手をつけよう」という直感・感情任せの判断は絶対に避けなければなりません。この場合、社員が被る不利益の度合いと、それを緩和するために、たとえば賃金をカットする代わりにほかの労働条件を有利に変更するなどの代償措置等をとるなど、慎重な対策が求められます。
●就業規則も労働協約もないときはどうすればいい?
賃金を含むすべての労働条件の変更には、原則として使用者と個別社員の双方の合意が必要です。後日のトラブルを防ぐため変更後の労働条件について確認の文書を残すことも忘れてはいけません。労働条件を引き下げる前に、会社としてできる限りの手をつくしたという前提が必要です。
【不利益変更を行う前に実施・検討すべきポイント】
1.使用者側の諸経費、役員報酬の削減
2.役員数の削減
3.遊休資産等の売却など
4.取引先に協力を依頼し、コスト削減、販管費もカット
5.新卒採用の抑制
6.中小企業緊急雇用安定助成金等の公的助成金の活用
7.労働時間の短縮などの代償措置の検討
8.副業の条件付き認可の検討
上記のポイントを検討し、やむを得ず労働条件の不利益変更を行う必要があるとの結論に達した場合は、
・きちんとした説明のもと
・その妥協点を探り
・合意を得る(社員一人一人から合意書を署名捺印つきでもらう)
ことが最も重要です。
【就業規則の作成・変更による不利益変更の方法】
就業規則の不利益変更には、以下のような点に注意が必要です。
〈就業規則不利益変更の8つのステップ〉
1.現在の労働条件のうち何を変更しようとしているのか、変更によって何が解決されるのかということを明確にする。
2.変更内容について、労基法等の法定要件をクリアしているか確認する。
3.社員全体と特定層(例えば55歳以上の社員等)に及ぼす不利益の程度を比較し、なぜそうなるかの合理的な説明が可能かどうか検討する。
4.不利益変更を補うための労働時間の短縮・その他福利厚生案の代償措置や調整期間を設け、徐々に賃金を引き下げる等の経過措置をとることを検討する。
5.社員過半数代表者等と変更内容についての説明・交渉を十分に行う。
6.不利益を被る社員の意見にも耳を傾け、個別に配慮が可能であれば、調整する。
7.非組合員・管理職のほか、パート、アルバイトといった非正規社員も含め、会社の経営事情・変更される労働条件の説明を決算・経理資料などをもとに行う。
8.1~7を誠実に行ったとしても過半数以上が反対している制度変更の実行はむずかしいということを念頭に置き、制度変更の内容を抜本的に変更し妥協点を探る。


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